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でも、最後の最後に。
「最後の私」は、最後の瞬間に、蘇った。
それは、歓喜にも似た感情だった。
夫も、娘も、途方にくれているのかもしれない。
それは、わかっている。
だけど、やっと楽に息ができて。
自由に手足が伸ばせて。
私は、「私」に戻れた。
だから。
私は、「私」に戻れた私を、手放すつもりはなかった。
そうして。
良い香のするバスタブで手足を伸ばし、お湯を堪能して。
よく冷えたシャンパンを備え付けのグラスに注いだ瞬間。
ホテルの窓の外が、まるで何万発も花火が爆発したように輝いた。
私は、その輝きの中、シャンパンに口を付けて。
こう、思った。
「ああ、美味しい」と。
それが。
「最後の私」が、最後に思ったことだった。
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