最後の私

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 私は、それを全て夫に伝えていた。  けれど、夫は当日まで何もせず、ただ私に怒鳴って、「早くお袋を迎えに行け!」と、言うだけだった。  静かになったスマホをサイドボードに置き、私はバスルームに向かった。  お湯を出してみると、ちゃんと「お湯」が出て、私は嬉しくなり、「やった!」と小さく呟いた。  ベットルームに戻り、持って来た荷物の中から、バスボムを取り出した。  随分前に買ったものだけど、私は使っていなかった。  そもそも、夫は入浴剤のようなのものは好まない人で。  娘は、拒絶はしないものの、自分の好みではない匂いだったりしたら、「もう、お風呂には入らない」と言う子だったので、なかなか使う機会がなかったのだ。  そうして。  次に、このホテルに来る前に立ち寄ったデパートで、拝借して来た高級缶詰をテーブルに置いた。  冷蔵庫には、冷えたシャンパンもある。
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