プロローグ

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 後ろ手に手首を縛られたミュゼは、王宮の一室に跪かされていた。 「第一王子、ルズガル」  王が呼ばわるその王子の印象は「黒」。  片目を隠すように覆った布。襟足を長く伸ばした髪。一見して鍛えているとわかる引き締まった体に纏う、天鵞絨の服。すべて黒い。  唯一瞳だけが金色で、ときおり赤い遊色がよぎる。思わず見とれていると、それに気がついたのだろう。冷たく一瞥の後に、あからさまに逸らされた。――怖い。 「第二王子、ヤプシ」  一方、次いで呼ばれた王子は、ミュゼににこりと微笑みかけてくる。ミュゼもつられてぎこちなく笑みを返した。――い、いいひと?  ヤプシは淡い金髪の髪を腰の辺りまで伸ばして、後ろでひとつにくくっている。身に着けているのは、ルズガルとは対照的に、ゆったりとした長衣で、この国古来の民族衣装に近い。薄紫の生地は、彼の灰色の瞳にもよく似合っている。ルズガルが武人なら、こちらは文人。優雅に絵でも描いているのが似合いそうだ。  玉座の王が、ミュゼに告げた。 「お前には、これから二十日間、一晩ずつ交互にこの二人と交わってもらう」
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