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「……どういうことだ……?」
まず、剣を見る。しかし錆びた鈍らのままだ。急に切れ味が良くなったわけではない。だとすると——
「人、ではないのか?」
また1人、勇者の前に立ちはだかった。が、かなり距離を置いている。
仲間が消えて動揺しているのだろう。
「鎮まりなさい、勇者よ」
「鎮まらねぇよ。つぎはお前か」
「お待ちなさい。お前の敵は魔王ですよ」
「おまえら、主を盾にするのか」
「我々の主は、魔王ではありません。我らは神の使者なのです」
「神の使者? 神の使者が魔王を作るってどういうことだ?」
「すべては全能神の思し召しなのです。魔王だけではありません。勇者もお作りになりました。お前も神から人智を超えた力を授かっているでしょう?」
「ああ。ようやく、そんな気がしてきたところ」
「人はとても不安定なものです。はっきりと善悪が見えていないと、揺れ動き、時に間違えることがあります――」
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