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4.
静かな魔王城に、2つの足音が響く。
玉座の間にて、魔王と勇者は向かい合っていた。
玉座に座る魔王は、慣れ親しんだ座り心地を味わうように、ひじ掛けをさすっている。うっすらと笑みを浮かべているような、穏やかな顔をしていた。
運命は断ち切った。これでもう、魔王は生まれない。
「なかなか良い城だな」
「ああ。君にやろう」
「いらねぇよ」
「このまま根無し草でいいのか?」
「いい。またあちこち見て回るさ」
「君との旅はいいものだった。忘れてしまう前に、逝くとしよう。私の生はあまりに不浄だった」
「あんたのせいじゃねぇよ。約束通り、もてなしてもらいたいところだが、従者がみんないなくなっちまったしな」
「そうなんだ。申し訳ない」
「はは、」と、まるで旧友のように、兄弟のように。
気安く笑い合う声があたりに響く。
「こうして対峙するのが、本来の、正しい出会いだったんだ」
「普通に出会ってたら俺には無理だな。なんだよ、あのでっかい剣」
「いいや、私はここで討伐される運命なのだ。勇者は唯一の弱点……。私は君に抗えないのだよ」
「……すべて、あんたの思惑通りになったな」
「……君にしかできないことだ」
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