16人が本棚に入れています
本棚に追加
魔王は衣をはだけ、体に描かれた魔法陣を露わにした。
誰に教わったわけでもなく、互いにやり方は分かっている。剣が錆びついていようと、関係ない。胸の魔法陣にただ、突き立ててうずめていくだけ。そうすれば、異界への扉は閉じられ魔王は解放される。
勇者は、ちら、と腰に吊り下げた剣を見やり、深い息を吐いた。
「君が心を痛めることは無い」
「俺が? 馬鹿を言え」
「運命だよ」
「気に入らねぇな。気に入らねぇよ」
「こうなることははじめから決まっていた。けれども、意味を変えられたではないか。それは我々の中にだけあればいい」
「……わかっている」
「この日をずっと待っていた。私は一日たりとも覚えていられなかったけど、いつだって、君を待っていたんだと思う」
「こんな気持ちは初めてだ。これで、あんたが本当に救われるのが分かる。なぜだろう。満足で、とても幸福なんだ」
「それが勇者だ」
最初のコメントを投稿しよう!