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 目の粗い砂交じりの、赤い風が吹きすさぶ。  乾いた大地のひび割れからわずかに覗く生命の痕跡も、今、まさに途絶えんとばかりに枯れかけている。  魔のはびこる世界は救い手に見放され、すっかり荒廃していた。  国家は崩壊し、土地を管理する領主が力を持った時代も過ぎ、武器を持つ兵士の時代すらとうに終わっていた。人の営みの灯火も消えかかり、かつて集落があった場所は魔の巣窟と化している。闇に生きる者たちがのさばり、影へ影へと追いやられたのは人だった。  暗闇に身を落とした人はその心も荒み、疑心暗鬼に満ちていた。わずかな糧を奪い合い、殺し合い、物陰に潜む敵はもはや、魔物か人かも分からない。不道徳な宗教や無秩序な自警団が興ってはつぶし合い、人が寄り集まるところこそ、ろく(・・)なことがない。 「ククク……世も末だな」  干上がった湖の泥を(さら)いながらつぶやく男が一人。その手の中には死んだ魚の一匹もない。指の間から泥が落ちきった後に男が見たものは、何かを請い求めるような形をした空っぽの汚い手。すっかり骨ばってしまったが、ぐっと握りしめてみるとまだ、力がみなぎる。  
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