#最後のナポリタン

12/17
前へ
/17ページ
次へ
「他に、方法はねぇのかよ。店にあるのは、わかってんだ」  ここまでか。俺の最後の晩餐は、原点で締めくくることはできなかったようだ。  ガックリと肩を落とす俺を見て、店主は考え込むように「ううん」と唸る。 「参考になるかどうかは、わかりませんが……」  不意に、振り子をもう片方の手で止めた。手のひらに乗せた宝石をギュッと握ると、眉間にシワを寄せてカラスみたいな表情でこう言った。 「すごく冷たいですね。そのノートは冷たい場所にあります。まるで、氷のように冷たい」  あの店で、そんな場所は一カ所しか考えられなかった。  ※ ※ ※ ※ ※  喫茶ハレルヤに戻ると、ひとりの客がカツカレーを食べていた。俺はお構いなしに、厨房へ飛び込む。 「あら、お帰りなさい」 「ママさん、わかったよ、ノートの場所が」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加