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実家に帰郷し、部屋にこもる。俺は、酒とタバコとテレビと漫画を消費するだけの生き物となった。ときどき、おふくろの金をくすねて、パチンコや競馬で気晴らし。おふくろは「大丈夫かい」「心配だ」「悩みがあるならいつでも聞くよ」と毎日うるさく声をかけてきた。あまりにの鬱陶しさに、一発殴ったらそれ以降何も聞いてこなくなった。
そんなクズみたいな生活も、今日で終わりだ。俺の人生を狂わせたあいつをぶっ殺して、すべてを清算するのだ。だからその前に、とっておきの飯で腹を満たしたい。
※ ※ ※ ※ ※
「俺が料理人になろうと思ったきっかけは……ああ、あの店か」
俺は帰路へとついていた。だが、家の前を素通りし、交差点を右に曲がって公民館の横へと足を伸ばした。
古びた看板、黒く油で汚れた換気口、埃だらけの食品サンプルが並んだショーケース。喫茶ハレルヤは、俺がガキの頃と同じたたずまいでそこにあった。
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