その3。「女当主」

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その3。「女当主」

 契約結婚相談所へようこそ!  私は、本日担当させていただきますアメリ=カーストンと申します。  早速ですが、どのような契約結婚をご希望ですか? 「不慮の事故で前当主だった父親が亡くなった。子供は未婚の娘である自分一人。このままでは遠い親戚に乗っ取られてしまう。契約結婚の婿を今すぐ紹介してほしい」ですか。  まずは、お悔やみ申し上げます。  大変でしたね。  では、婿入り希望の方をリストアップしてみますね。  えー、かなりの数がいらっしゃいますが、とりあえず、お客様とお年が近い方にしぼり込みますと……。  はい、12人ほどいらっしゃいます。    契約結婚後、お客様はどのような結婚生活をご希望ですか?  出来るだけ、ご要望に添える方をご紹介いたします。 「領地経営に関しては、以前から父親を手伝っていたので自分が続けたい。よけいな口出しをしない人を希望する」ですか。  ふむふむ、なるほど。  失礼ながら、お客様のお家は大変裕福ですし。  ええ、まぁ。ですから、親戚の方も乗っ取ろうとしていらっしゃるのでしょうけど。  そのような家だと知れば、欲を出される男性もおられるかと。  もしくは、妻の金で遊び暮らそうとする方もいらっしゃるかもしれません。  そうですね。  確かに、なまじ賢いよりその方がましな場合もありますが。  ……失礼ですが、後ろに控えていらっしゃる方は?  護衛の方ですか。  なるほど……。  どうでしょう? そちらの方を婿に迎えてみては?  身分が違う?  いえ、実はですね、当社は最近新しい部門を設ける予定でして。  はい、貴族の方と、ワケありの方の養子縁組を組むという事業です。  元は、遠い異国かどこかからいらっしゃった聖女様を貴族のご養女に、というのがきっかけでして。  そちらの護衛の方をご貴族の方と養子縁組をし、その後、お客様の婿として迎え入れるというのはどうでしょうか?  はい。お客様のようなご裕福なお家と繋がりができるとなれば、向こうにとっても悪いお話ではないかと。  えー、あの、見つめあっていないで、話を聞いてください。  そういうのは、帰ってからお願いいたします。  そうですか! では、お話を進めさせていただきます。  当社は契約結婚成立後のお二人のご関係には一切の責任を負いませんので、その旨を了承したと書類にサインをお願いいたします。  はい、ありがとうございます。  では、養子縁組の手続きが済み次第、次の段階に進めさせていただきます。  ……ですから、そういうのは帰ってからにしていただけますか?  本日は、ありがとうございました!                
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