その4。「偽聖女」

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その4。「偽聖女」

 あー、もう、やってられるかっての!  おかわり!  飲み過ぎ? ほっといてよ!  どいつもこいつも幸せそうにしちゃってさ。  どうせ、あたしは王子に婚約破棄された女ですよぉーだ。  なぁーにが、「彼女こそ真の聖女だ」だよ。  だいたいねぇ、あたしから聖女なんて名乗ったこともないっつーの。  それを勝手に教会が召しあげたんでしょうが!  いや、まぁ、あんな下町の孤児院育ちじゃ、今みたいに読み書きもできなかっただろうし?  それだけは感謝してるけどさ。  ……今の仕事、好きだしさ。  なぁんか、いいよね。  不安そうな顔して来た人が、笑って帰って行くんだよ。  ああ、ゴミカスクソムシは別だけどさ。  ……うん、この国の人にも感謝している。  あの国を追い出されたあたしを受け入れてくれて……。  今の家族もさ、あたしなんかを娘って言って大事にしてくれるし。  しあわせもんだよね、あたし。  あー、やだやだ。  なんか柄じゃないよ、こういうのはさ。  おかわり!  えー、あと一杯だけだから!  いいじゃん!  やった、ありがと。  「偽聖女」アメリより、この国に祝福を!  かんぱぁーい!  んぁ? なんだろ、きらきらしてキレイねぇ……。  どしたの? へんな顔して。  あー、もうお酒なくなっちゃう……。  ……みぃーんな、しあわせだといいよねぇ。  あ、ゴミカスクソムシは別だけど!            
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