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桜山線子燕駅
春の子燕駅は、ツバメの鳴き声で賑やかだ。
「ママ、ツバメの雛!」
叫んだ優がホームの屋根を指す。鉄筋の柱とトタン屋根の隙間に、茶色い巣がいくつもできていた。
親ツバメが優の頭上をさっと抜けて巣に戻ると、雛たちは黄色い口をまんまるに開いて「ぴぃぴぃ」と、しきりに鳴く。
その口にエサを押し込んで忙しそうに飛び回る親ツバメ。
「かわいいねぇ!」
優が興奮して叫ぶので、愛美はしっ!と、慌てて注意する。
「駅では、もう少し静かにしよっか」
「そうだっ、電車が来る前に一番前に急げー」
「優ちゃん、ホームでは駆けちゃ」
注意する間もなく優は愛美の手を引っ張り駆け出す。優との身長差に前のめりになりながら愛美はため息を吐いた。
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