青春の入り口で

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青春の入り口で

 昭和後期。  江口 真奈美は青春の入り口で躓いてしまった。  真奈美は、大好きな先輩にギターの本を貸すために、中学校の図書室から先輩が廊下に出てくるところをドキドキしながら待っていた。  先輩が廊下に出てきて、二度と返ってこなくなったギター本を。その時は、初めて男子の先輩と話すことで胸がいっぱいで、特に好きという訳でもないのにときめきで胸が苦しくなった。恋ではなく、ただのあこがれだったと思うのだが、青春の持ち味であることに間違いはないだろう。  ギターとの付き合いは真奈美が小学校の時に、母が店を預かっていた小料理屋にくるお兄さんにギターコードを3つだけ教わったことから始まった。  Am(エーマイナー)E7(イーセブン)Dm(ディーマイナー) トロイカという歌がこの三つのコードで歌える。    元々古いギターが店に置きっぱなしになっていた。  まだカラオケがやっとはやり始めた頃で、カセットテープでカラオケの曲を流し、お客さんは紙の歌詞カードを見て歌っていた。
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