姉の気持ち・ピアノとの決別

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 真奈美は訳が分からなかった。確かにピアノは、真子は卓球を始めてすぐにやめてしまったし、その頃には真奈美の方が上手になっていた。  何より真子は手が小さかったのだ。真奈美はとりあえず普通の大きさだったし、ピアノを弾く人の特徴で指がものすごく開くように練習していた。  真子は指を開く練習をしようにも、手を合わせると真奈美の第一関節までしか届かない程手が小さかったのだ。  上級の曲はどうしても一オクタープは届かないと弾けない曲が多くなってくるので、手が小さいのと卓球が忙しいのでやめたのだと思っていた。  そして、このタイミングだ。真奈美はピアノを泣く泣くあきらめて父の横暴で卓球をすることになったのに。泣き面に蜂とはこのことだ。  習字も真子は6年生までできっぱりとやめていた。習字に関しては真子の言っていることは間違っている。真奈美は真子を抜かしてなどいなかった。  毎年お正月になると大きな紙に書初め展覧会用の習字を書くのだが、真奈美はどうしても字が細く、小さくまとまってしまうのに比べ、真子は小さな体に似合わず、伸び伸びとした太い字を書き、全国の展覧会に提出すれば、最高位である特別賞を何回もとっているのだ。
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