青春の入り口で

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 カラオケが出るまでは呑み屋で歌いたければ、『流し』と呼ばれるギターやアコーディオンを弾いてくれる人が来るのを待つ。  大抵はおじさんである『流し』が店に直接やってきた時に、お客さんのリクエストに応えてギターやアコーディオンを弾き、お客さんが歌うか、『流し』の人が弾き語りをするかという、音楽の楽しみ方だった。  真奈美の住んでいる所はあまりにも田舎過ぎて『流し』すらこない。  そこで、店にギターを置いてあれば、弾きたい人は自由に弾き語りをしたり、お客さん同士でリクエストしたりして歌っていた。  そのギターで最初の三つのコードを教わったのだった。    真奈美はもともとクラシックピアノをやっていて、将来は音楽の先生になろうと思っていた。  小学校でギターを教わったころにはもう、ピアノはソナチネは終わり、ピアノソナタや、簡単な名曲選を教本にして、ピアノのレッスンを進めていた。  ピアノが弾けるのでギターのコードは簡単に覚えられた。  真奈美が中学校に入る頃には自分でギターの本を買い、その頃まで知らなかったジャンルのフォークギターにはまることとなる。
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