青春の入り口で

5/8
前へ
/62ページ
次へ
 真奈美は6人ほどで群を成してきたその女子をそのまま2組に連れて行き、グループを組んでいた二人の男子に事情を話し、2組の中で決着をつけてくれるように頼んだ。はっきり言って真奈美はまだ誰にも恋をしたことがなかったので、よそのクラスまで来るその女子たちの気持ちが分からなかった。  しかし、すぐにその、やきもちを焼いた女子達の気持ちが分かることになる。  一つ年上の先輩。ギタークラブではなかったのだが、ギター本を貸してほしいと真奈美の教室までわざわざ頼みに来た。先輩の男子。それもちょっとチャラくて不良っぽい感じの先輩だ。  なんとなく真奈美はドキドキしてしまった。  すぐには貸せなかった。歌本はとても貴重で高価だったから。  2組の男子に聞くと、その先輩はギタークラブではないけれど、ギターは上手で、だから本を貸してほしいのではないかという事だった。  かぐや姫のコピーを耳コピでしているくらいだ。中学生はお金がない。歌とコードと歌詞が載っているギターの歌本を一冊買うのだってお小遣いをやり取りしてようやく買っているのだ。  今も結構な値段がするが、その頃も、一冊1500円から2000円はした。ギターの歌本は中学生には結構なお値段だ。  真奈美は歌詞を覚えるのが苦手だったので、どうしてもギターの歌本は欲しかった。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加