青春の入り口で

7/8
前へ
/62ページ
次へ
 お年玉をもらった時にはレコードを買った。勿論大好きな井上陽水だ。かぐや姫は本で大分網羅していたので、歌本だけでは難しかった井上陽水の曲を覚える為、レコードを始めて買ったのだ。  先輩に貸したのはその当時のフォークソングのヒット曲が載っている歌本だった。  真奈美もとても重宝していて、フォークギタークラブのグループでも重宝していた歌本だったのだが、先輩に貸している間は仕方ないとみんな我慢していた。  図書館から先輩が出てくるのを待ってまで、ちょっと胸をドキドキさせながら貸した歌本だが、その先輩がもうじき卒業と言う頃までその歌本は帰ってこなかった。  せかすのも気が引けたので結構長い間貸しっぱなしにしていた真奈美も悪い。  真奈美の周りの友人は皆きちんとしていて、小説や漫画を貸してもまた貸しするなんて言う事はなかったし、必ず帰ってきていた。  だから真奈美は、先輩に貸したのだから必ず帰ってくると、じっと待っていたのだ。  もうあと一週間で卒業と言うときにもう一度勇気を振り絞って真奈美は先輩の教室にいった。 「先輩、前に貸したギターの本、そろそろ返してもらえますか?」
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加