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それから150年ほど経ったある時。
寺を破壊しようとする者たちが現れた。
女の修道者を良く思わない者たちだった。
緑蛇は、寺を守ろうとした。
数多の剣が、緑蛇を襲った。
しかし、緑蛇は。
その巨体をうねらせ、立ちはだかるのみ。
牙も剥かず、ただ払うだけ。
緑蛇の鱗は剥げて、透明な血が流れる。
それでも緑蛇は、牙を剥かなかった。
緑蛇は知っていた。
今、緑蛇の牙には、毒がある。
赤子への慈愛は、牙に薬を宿した。
しかし、不届き者たちへの怒りは。
牙に毒を宿らせる。
一瞬で命を奪うほどの、毒だ。
緑蛇は、命を奪いたくなかった。
ならず者でも、その命は尊い。
緑蛇は、決して牙を剥かなかった。
そして、斬られる痛みに、耐えていた。
ならず者たちは、とうとう。
寺に火をかけた。
修道者たちが懸命に消そうとするが、叶わない。
乾燥した空気が、炎を一層燃え立たせた。
傷だらけの身体で、緑蛇は這った。
そして、自らの身を火に投じた。
修道者たちの叫び声、ならず者たちの笑い声。
怒りに震えながら、緑蛇は泣いた。
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