部長の実態3~押井部長編~

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「恋するか、試しに教えてください。泣いてた理由。」 「んー?」  部長が笑いながら背もたれに体を預け、スクリーンに視線を戻す。照らされた顔はやはり整っていて、もう少し見ていたいなと思うくらい綺麗だった。 「この映画、本当は1年半前に上映予定だったって知ってる?」 「はい。前売り券買ってたので。」  部長がこちらを見て 「そうだったね。」 と言った。もう鉄仮面でもなんでもなく、優しく微笑んでいた。頷くと、部長がまたスクリーンに視線を戻す。 「買い付けとか、上映館のボイコットとか、大人の事情やら、社会問題が絡んで、延期に延期を重ねているうちに、他の作品にどんどん公開枠取られて。やっと今、上映。」 「そうでしたね。だから、封切の時も大した宣伝してませんでしたもんね。」 部長が頷く。まっすぐにスクリーンを見つめて 「でも上映した。すごいよ。」 と言った。
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