部長の実態3~押井部長編~

12/17
37人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「あは。見えません。」 「見なくてよし。」 「見せてください。」 「少しは遠慮しなさい。一応、俺は部長です。」 「じゃ、指の隙間からでいいので見せてください。」  部長がプハッと笑って、手を元の位置に戻した。  鉄仮面が崩れると、押井部長はただのイケメンで、しかも割と完璧なただのイケメンで、あの噂はとんだガセネタだなと考える。 「俺、結構、怖がられてるはずなんだけどな。」 押井部長が可笑しそうに笑いながら呟く。 「ただの完璧なイケメンでした。ガッカリです。」 「おや、それは申し訳ないことをした。」 「お詫びに、泣いてた理由聞かせてください。」 「やだよ。今度こそ小貝さんが俺に恋をしてしまう。」 「なんですか?それ。」  もう、映画館で映画鑑賞中とは思えないほど、普通に会話している私たちを咎める人はいない。期せずして貸し切っているこのシアターにいられるのは、この面白くない映画が終わるまでの、あと15分くらいだと思うと、なんだか少し名残惜しかった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!