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その姿をつい眺めてしまっていると、部長が
「失礼。小貝さんはいるのに、無遠慮に鼻をかんでしまった。」
とティッシュを丸めながら謝られた。
「いえ・・・というか、押井部長が私の事ご存じだと思わなくて、そちらに驚いていました。」
部長が私を見つめ
「なぜ?同じ会社の仲間じゃないですか。」
と鉄仮面で言った。
嬉しいはずの言葉なのに、無表情で言われると、もしや嫌味?などと勘ぐってしまって素直に喜べない。
「・・・恐れ入ります。」
ボソリといって頭を下げると
「広報が企画して、小貝さんの部署が実施担当になったプロジェクトの22-KS43エリアのご担当ですよね?」
と言われて、目を見開いて押井部長を見つめてしまう。
「よく、ご存じですね。」
「最近、会議で話題に上ったプロジェクトなので。」
「え?打ち切りですか!?」
「いえ、今は経過観察中です。かなり新しい挑戦も含むプロジェクトなので丁寧に見ていこうとしています。」
「そうですか・・。どうぞ、よろしくお願いします。」
「こちらこそ。実務のお役に立てないのは心苦しいですが、皆さんが安心してプロジェクトに集中できるよう、こちらは会社全体での資金やバランスの調整を頑張ります。」
「え?あ・・・はい。」
「なかなか顔を合わせて同じ作業をする機会には恵まれませんが、一緒に頑張っていきましょう。」
鉄仮面、優しいじゃん。
表情を変えない押井部長をぽかんと見つめながら
「はい。若輩者ですが、頑張ります。よろしくお願いします。」
と言った。
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