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気が付けば、顔だけ真横を向いて、押井部長をじっくり観察してしまっていた。ふいに部長がこちらを見て目が合い、私はビクリと椅子の上で飛び上がった。
「すみません、見すぎてました。」
謝ると、鉄仮面が鉄仮面のまま
「いえ。良かったら、お隣に移動してもいいですか?」
と訊ねてきた。
「へ!?あ、どうぞ。」
鉄仮面がのそりと立ち上がって、一席、私のほうにずれてくる。
「お邪魔します。」
座ってから、ペコリと頭を下げて言うので、私も
「ようこそ。」
と頭を下げた。
「映画、楽しんでますか?」
スクリーンの方を見たまま聞かれ、
「いえ。正直、もうストーリーは見失いました。」
と答えた。鉄仮面がこちらを向いて
「俺も。」
と言ったので、私はその顔を見つめてしまう。確かに鉄仮面だ。表情は変わらない。でもなぜか、押井部長が微笑んでいるのが、伝わってきた。
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