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「小貝さんは、どうしてこの映画をご覧になってるんですか?」
押井部長がスクリーンに視線を戻して聞いてきた。私もスクリーンを眺めながら、ぼんやりと答える。
「付き合っていた人が前売り券を買ってくれてたんです。面白そうだからって。公開前に彼とは別れてしまったけど、前売り券をこのまま紙屑にしてしまうのはもったいなくて。面白いかもしれないし。」
「そうですか。」
「でも面白くありませんでした。」
「まだ始まったばかりですよ。一応、最後まで見てから評価してあげようじゃないですか。」
「そうですね・・・。でも、もうストーリー見失ってしまったので。」
「俺もです。でも最後まで見たら来て良かったと思うかもしれない。途中で帰ってはいけませんよ?」
「頑張りますが、もし私が立ち上がっても、その時は止めないでください。」
「努力します。」
部長がクスリと笑う声が聞こえて、すかさず横を見るけれど、表情はやっぱり変わっていなかった。
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