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しばらく映画を見るけれど、追えていないうえに面白みのないストーリーのせいで、見るというより眺めている状態になり、だんだんと目蓋が重くなってくる。ウトウトしながら部長の方を見ると、部長は相変わらず表情も変えずに、綺麗な二重と長いまつ毛の目でスクリーンを見つめていた。
「どうして泣いてたんですか?」
思わずポツリと訊くと、部長の綺麗な目がこちらを向いた。
「眠いんですか?」
質問に答えずに質問してくる部長に笑ってしまう。
「はい。眠いです。部長は?」
「眠いですが、頑張って見てます。」
「全然そんな風に見えませんね。」
「ああ。どうも俺は鉄仮面らしいので、感情とか状態とかの変化が他人には分かりずらいみたいですよ。」
そう言う部長は柔らかい雰囲気を纏っていて、鉄仮面だけど冷血漢ではないなぁと改めて思った。
「表情は変わらないけど、なんとなく気持ちは伝わってきますよ。部長。」
そう言い残して、私は睡魔に屈した。
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