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高校の授業中も僕は美涼のことを考えてばかりだ。夢で会った彼女を思い出し、次はどんなシチュエーションで会えるのだろうと楽しみで仕方がない。
授業は退屈だ。ちっとも面白くなんかない。でも、僕の夢の中で生まれた美涼が現実にいて一緒に時を過ごせるならどんなに幸せなことだろうか。
そういえば初めて彼女が夢に現れた時はどんな状況だったけか…
「孤立してたっていいじゃないですか。毎日が充実さえしていれば。それで十分。」
見ず知らずの彼女に気がついたら言っていた。一人でいるのが恥ずかしい、周りの目が気になって仕方がないんだと。
「でも、なんだか自分だけがみんなと違う気がして嫌になっちゃうんだよ。自分のことも嫌いだ。」
「同じ人は誰もいませんよ。みんな違うんです。ただ、人と人には共通点があるものです。」
思わず僕は問い返した。「共通点?」
「はい、そうです。話をするのが好きとか運動が好きなどという具合に。人はそれぞれですから人と人で共通する部分を持つものも限られます。瑠偉君は自分が嫌いだと言いましたね。」
「あぁ、言ったよ。」
「実は私も自分のことが嫌いなんです。私と瑠偉君は自分のことが嫌い、共通していますね。瑠偉君は人と違うのではないのです。私と一緒なのですから。」
「確かに人と人では似ている部分は違うというし、でも一人はやっぱり寂しいよ。」
「一人なんかじゃありませんよ。私がいるじゃないですか。」…
私がいるじゃないですかと言われたところでそれは夢の中の話でしかない。現実じゃ友達の数も片手も埋まらないほどさ。そんな唯一の友達が幼馴染で家も隣の彼、英樹だ。教室に入ってきた英樹が明るい声で「帰るぞ、瑠偉。」と迎えに来た。
高校に入って1ヶ月が経過し雰囲気にも慣れてきた。新しい環境が苦手な僕にとって慣れるというのはとても嬉しいことだ。入学したとき同じクラスに英樹の名前が無かった時はどうなることだと思ったけれどそれなりにやれているので安心している。
僕らは家から近くの高校に入学した。歩いて数分の距離だ。学校にこだわりもなくスポーツもやってきたわけでもない。受験勉強も面倒くさかった。だから普通程度の偏差値で通いやすい高校に進学したのだ。
普通に生活できればそれでいい。面倒事は嫌いだから。
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