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青く輝く海とは裏腹に空はどんよりと濁っていた。そんな空を見ていると自然と気分がおちる。でも何故か見入ってしまうのだ。どこか僕らしさを、近さを感じたから。砂浜に寝っ転がり空を眺めていると濁った空は徐々に赤色となりやがて紫色へと変わった。それにしても不気味な空だ。何か良からぬことでも起きそうな、そんな気がした。 一人砂浜に寝っ転がっていると「こんばんは。」と話しかけられたので僕は体を起こした。視線を向けるとそこには一人のお婆さんがいた。 「少しいいかね。ところでだけどここの海は好きかい?」 「はい。」というと婆さんは嬉しそうに喋りだした。 「ここの海を見るとまず対岸にある島にかけられた橋が目に入るだろ?この橋は387mもあるんだ。その橋を渡った先の島には神社があってねとても縁起が良いんだよ。」 あまりにも一方的に語るお婆さんだったものなので面倒臭さを感じていた。 「そうですか。でも僕はこの橋はまだ渡ったことがないです。」 歩いて渡るにしては少し遠いと感じるから僕としては橋を渡ってみようと考えたことはなかった。するとお婆さんがニヤリと不気味な表情を作った。 「なるほどね。歩くには少し遠いかね。」 「え?」思わず声が漏れた。 というかまずこのお婆さんは何者なんだ。見ず知らずの僕に話しかけ僕の心の中を読んできたのだ。 「すいませんがあなたは一体何者なんですか?」 「何者ねぇ。わたしから今言えることで言うならば少なくともこの世界ではわたしにわからぬこともないし、不可能なこともないとでも言おうか。」 お婆さんの言ってることが理解できなかった。それじゃあ最強ではないか。 「理解できなくてもいずれ分かる時がくるからその時を待ちなされ。」 まただ。また僕の心を読んできた。気味が悪い。 「さぁ、それはさておき本題に戻そうかね。歩くのが面倒くさいと言ってもねおよそ400m。そのくらい我慢して渡りなさい。でもちゃんと現実世界で行くの、いい?」 「現実世界?」 「あなたも分かっているのでしょ。ここは夢の中の世界。だから夢じゃなくてちゃんと意識がはっきりとしているときに一人でお参りに行ってみなさい。」 「お参りに行くのはいいのだけれどもそこの島と神社の名前はなんて言うのですか?」 少し間をおいて婆さんが口を開く。 「これ以上は教えられないね。時間がかかってでもいいから頑張ってこの神社を探し出して訪れてちょうだいな。必ずだよ。」 とりあえず僕は分かったと頷いた。 「そろそろいい頃合いだね。」 そう言うと婆さんはポケットから何かを取り出して僕のおでこに当てた。
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