八戸ひよりはバズりたい

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 当然の出来事である。影が薄いのならば、横断歩道を渡っていても気づかれない。ひよりは自分の愚かな行動を悔いた。いつもは気を付けているのに、油断した。  まだ流行語大賞を生み出してすらいないのに。まだ何ひとつとして傑作たちを世に輩出できてすらいないのに。この体質のせいでトラックに轢かれて、死んだ。人気のない場所だから死体が発見されるのもだいぶ後だろうな、とひよりは空を見ながら考える。  ひよりの目からは自然と涙が零れ落ちた。キラキラ系人間になる夢も死んでしまったなら叶えることさえもできない。結局、死ぬまで誰にも認知されずに逝ってしまった。この体質を憎み、神と仏を憎んだ。  この憎しみによって、もしかしたら悪霊と化すかもしれない。地縛霊になったりして。それはそれでいいかもしれない。いっそ幽霊になって色んな人に怖がられた方が認知されている感があって嬉しい。名前は何にしようか。「ぼっちガール」にでもしようかな。 「おーい、戻ってこーい」  誰かに声をかけられ、ひよりは起き上がった。ひよりの目の前には真っ黒な制服に身を包んだイケメンが足を屈めて、じっとひよりのことを見ていた。 「え!?」 「八戸ひよりさんですね?」 「え、あ、はい。え、ま、見え、え!?」  知らない人に話しかけられたのと、名前を呼んでもらえたのと、死んだはずなのにイケメンにはひよりが見えているのとで色々なことが重なってパニック状態になった。焦るひよりにイケメンはプッと吹き出すと、「面白いですね〜」と言った。  イケメンに面白いと言われて、さらに焦るひより。ついにはシャットダウンしたかのように動かなくなったひよりを見て、今度は腹を抱えて笑い出した。 「僕はです。八戸ひよりさん、貴方をお迎えに来ました」   死神、と言われて電源がONになる。それから「あ、そっか」と呟いた。死んだんだ、私。 「これから貴方を黄泉の国にご案内します」 「黄泉の国って実在するんですね」 「はい、天国と地獄もございます」 「ちなみに私がどっちに行くかは……」 「残念ながら僕にはそこまでの情報が届いておりません」
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