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あ、これいいかも。そう思ってひよりはノートにメモをした。字で埋まっていくノートを見て、ひよりはニマニマした。
八戸ひよりは都内の高校に通う女子高生。流行に敏感で、オシャレも大好き。休日には化粧をして、友達とカフェ巡りをする。勉強も部活も恋も全力で頑張っているキラキラ系JKである。
否、これは全て彼女の妄想の姿である。
現実の八戸ひよりは都内の高校に通う女子高生ではあるものの、友達が一人もおらず、存在さえも覚えてもらえない。そもそも影が薄すぎるあまりいることさえも気づかれない、そんな悲しい人間である。だから外でニマニマしようが、変顔しようが、逆立ちしていようが気づかれないのである。
某バンド曰く、我々は陰キャか陽キャかを分類しないと生きていけないらしいので分類すると、彼女は勿論「陰キャ」に分類される。キラキラ系JKとはかけ離れた存在である。
そんな彼女の日課は創作。教室の隅で、トイレの個室の中で、通学電車の中で、ベッドの中で、色んな場所で創作してはノートに書き溜めていく。無論、彼女がそのノートの中身を誰かに見せたことは無い。そもそも見せれる相手がいない。
創作といっても二次創作や創作漫画といったものではない。小説でもない。
「ぴえんすぎて湖……『悲しすぎる』の意。良いな、JK使いそう」
またいい案が浮かんで、ひよりはノートにメモした。
そう、八戸ひよりは日々バズらせたいワードを創作してはノートに書き溜めているのだ。独特な感性故、それが果たしてバズるのかはさておき。八戸ひよりには野望があった。この手で流行語大賞を生み出したい、と!!
ひよりが初めて流行語大賞に出会ったのは2012年の流行語大賞である「ワイルドだろぉ」。そこで初めて流行語大賞という存在を知り、これらに選ばれた言葉を連発していればひよりが憧れている友達100人以上いる小学生になれるのではないか、と思ったのだ。当時小学校低学年だったひよりは純粋だったのである。
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