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「あの」大宮さんが
「と、いうわけで。できるだけ私達が音楽室を使える日を増やしてほしいのだよ」
大宮は、とある人物と話し合っていた。吹奏楽部長、高階萌。音楽室の部活動における使用権をほぼ掌握していると言っていい立場だ。
主に音楽室の利用に関して、伝統的に吹奏楽部と室内楽部は取り合い、あるいは論争を続けてきた。だが、それ以上に二人は良き友であり、互いへの敬意は忘れないようにしている。
「へぇー、ふぅーん」
「な、何だその目は……?」
「だって、要するにそれって、男の子と一緒に二人っきりで練習する時間が欲しいってことでしょ?」
言われて大宮は今更気付いた。相手は男の子。男の子。あまりにあの日は大胆すぎたか、でも了承されたからいいのか、あれこれ考えが巡っていくうちに顔が熱くなってきた。
「めぐちゃん……そういう言い方はやめたまえよ」
「だってそうじゃない、それ以外何かある?」
「あるだろう、なんかこう……なんだ?」
他の何でもなかった。ノリで実はとんでもないことを提案してしまったのではないか、と頭を抱えてしまう。
「ふふふ、いいの。それならせっかくだし、ちょっと使える日を多くしちゃおっかなぁ〜」
「なに!? いいのか!?」
「なんて言うと思ったか! こっちにだって譲れないものはあるの! だいたい、あくまで個人的なお願いに部が応じるなんて……」
これが室内楽部の持つ弱みでもあった。小さなバンドやユニット、あるいは個人で発表する都合上、出てくる要望は個人的なものになりがちで、これは部長だろうと変わらない。
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