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二人の奏でたいもの
合同練習初日。この日にはまず、演奏する曲を決めた。お互いのスマホの画面に、やりたい曲に関連した画面を出し、見せ合う。そこから、どちらにするのか、話し合う、と。
「同時に出し合うには、この方法だなと思ったのだが、どうだ?」
「あの……同時である必要性とは?」
「面白いからだ。不満かな?」
不満ではない。ただ、そういったことに理解がないだけだ。反論する必要もなく、ゆえに反論しない。必要があっても、永月夜一という男にはできないのだが。
せーの、の掛け声と共に見せ合う。すると、なんと表示されていた画面は全く同じだった。言い換えれば、意見は一致していた。
「む。意外だな、まさか被るとは。どうしてこれを?」
「部長さんと、最初に一緒にやったじゃないですか……あ、ゲームで、ですよ。その……僕、これが一番好きというか……」
「なるほど、確かにそうだったな。私もそうなのだよ。正直、ずっとこれをやりたくて、ただソロではどうも物足りないが故に諦めていたところもある」
その曲は非常に複雑かつ高速なリズムを持つプログレ的な楽曲であった。二人が出会った日、一緒に遊んだゲームに収録された、高難度楽曲であり、人気も高いが、実際に奏でるのも難しい、そんな曲。
だが、それを自らやりたいと言うほどに、二人はこの曲を愛し、また奏できる自信があったのだ。
「よし! そうと決まれば早速始めようじゃないか」
「えっ、楽譜は……」
「もう作った。なんだ、やる気があるからにはこれくらいするものだぞ? 君、用意してないのか?」
「まあ……はい」
「これは意見が合致しなくても、気合で押し通せたな」
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