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夜名原高校室内楽部
私立夜名原高校。運動部の名門としてよく知られる学校だが、文化部もまた負けていない。
中でも室内楽部は、元々弦楽やピアノでのアンサンブルを主体として活動していたが、軽音楽部と合併し、自由度の高い活動を許したことで、一大勢力を築いた。
これは、そんな室内楽部で出会った、二人のピアニストの物語である。
「新入生諸君よ、よくわが部に入ってくれた。私達室内楽部一同、大いに歓迎しよう。私が部長の大宮日姫だ。よろしく」
室内楽部、新入部員歓迎会にて。妙に芝居がかったような、古風な話し方をするこの少女のことは、新入部員達もよく知っていた。彼女目当てで入部した者もいるであろう程に、その風貌は美しかった。
スラリとした長い脚、黄金比の顔立ち、体型。目や髪の色素が薄めなのもあり、まさに「日本人離れ」している外見。
しかしながら、同時に誰も、彼女に手が届くとは思っていなかった。
「はぁー……あれがあの大宮選手の娘さんってわけか。本当に俺らとは違う世界のお人だぜ」
「……だね」
新入部員の男子二人が話している。普通の男子生徒と、極めて暗い雰囲気の生徒。暗い方の生徒は、話にあまり関心がなさそうでもある。
「反応うっす! 俺らの世代なら男子の誰もが憧れた野球界の至宝、その遺伝子を継いだ美少女がこんな近くにいるんだぞ?」
「……別に、聞いたことはあるけど、憧れてないし。僕は、そういう世界に興味ないから」
結局、話す相手を間違えたといった感じで、話はすぐに終わりになってしまった。
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