1・10年前、出会いの夜

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 しばらくして食事を終え、わたしは化粧室に立った。  化粧室は、厨房の横の、暗い廊下の突き当り。  で、用を済ませて、手を洗い、ドアを開けたら、津村先生が待っていた。 「わ」 「あのさ、梅谷」  軽く腕を引っ張られ、戸棚の陰に。  壁に背がつく。  そして、わたしの前に立ちはだかる津村先生。  あの、なぜかほぼ壁ドン状態になってるんですけど。 「梅谷」  ち、近いって、顔が。  いや、でも、そばで見るとまつ毛が長くて、さらに麗しい。  こんな美形が、毎日通う学校に潜んでいたなんて。  節穴だった、わたしの目。  でも、みんなも気づいてないから、先生、変装が異常に上手いってことか。 「俺がここで働いてること、誰にも言うなよ」  先生が小声で囁く。  あ、そうか。  他の人に聞かれないように、接近して小声ってことなのね。  でも、至近距離でその麗しい顔ですごまれると、わたしの意思に反して、心臓がドキンと跳ねる。  車に乗ったら速攻でみんなにLINEしようとしてたこと、先生にはとっくにお見通しだったってことですか。 「えー、だって、こんな面白いネタ……黙ってられるかなぁ。ちょっと自信ない」 「おまえたちの情報網は侮れないからな。あっという間に学校中に広がるだろう? そんなことで騒がれたくないんだよ。な、今度、なんかおごってやるから」
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