2・どっちが本物?

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2・どっちが本物?

 ひょんなことから別の顔を知ってしまった津村融先生は国語担当。  非常勤なので、担任や部活は持っていない。  いや、専任だったら忙しすぎて、ダブルワークなんて、とてもじゃないけどできないだろう。  去年の現国に続いて、今年の古文も先生のクラスに当たっていた。  これからはじまる五限はその古文。 「じゃ、授業はじめます」  教室内はまだざわついていて、先生の声は一瞬でかき消された。  今日の先生は当然、学校仕様。  ぼさぼさ頭で自信がなさそうに小声で話す、ちょっとダサい古文教師。    あの夜の先生は、やっぱり幻だったのかな。  そう思ってじっと見ていたら、目が合った。  すると先生は、眼鏡の奥から意味ありげに目配せした。    やっぱり幻じゃなかったらしい。  相手が津村先生とはいえ、こんなふうに秘密を共有するのは、ドキドキだけど、ちょっとワクワクもする。
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