2・どっちが本物?

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 それにしても先生の豹変の仕方、驚異的。  俳優になっても充分いけるんじゃないかな。  子供のころ読んだ、『王様の耳はロバの耳』の床屋の気持ちがよくわかる。  だって今、思いっきり叫びたい。  津村先生って、実は〝超イケメンのちょい悪〟なんですよーって。  どっちが〝本当の津村融〟なんだろう。  なんで、あの店で働いているんだろう。  好奇心が泡のようにむくむくと膨れあがる。  やっぱり、先生と直接、話したい。 〝口止め料〟のこともあるし。  わたしは授業終了のチャイムとともに教壇に駆け寄った。 「先生、質問があるんですが」  もちろん、質問なんてない。  でも、生徒が先生に近づく手段といえば、これが一番自然だから。  津村先生はちらっとこっちを見て言った。 「次の授業の準備があるから、放課後でいいですか」  わたしの秘めた目的、ちゃんと伝わったみたい。 「はい。じゃあ、職員室に行けばいいですか?」 「そうしてもらえれば」 「はい、わかりました」
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