489人が本棚に入れています
本棚に追加
うちの学校では、職員室前の廊下に机が並べてあり、そこに先生を呼び出して質問できるようになっていた。
タイムリミットは職員会議がはじまるまでの小一時間。
人気の先生の場合は争奪戦になるけれど、津村先生はやっぱり人気ないらしくて、すぐ来てくれた。
「よし。で、質問は?」
「先生のこと、知りたい。あれから気になって眠れない」
「それで授業中、白河夜船か」
「しらかわ?」
顔にも〝はてなマーク〟が浮かんでいたんだろう。
先生はあきれたようにふーっと息をつくと
「自分で辞書引いて調べて」と冷たい。
そんな小ばかにした顔しなくても。
わたしがちょっとふくれっ面になっててもお構いなし。
もお、意地悪なんだから。
「それにしても、ここじゃ、ゆっくり話せないな」
「じゃあ、連絡先教えてください」
先生は横目でちらっとわたしを見て、ささっとメルアドを書いた。
ちなみに以上の会話は全部筆談。
生徒や先生が行き来する廊下で、こんな会話交わせるわけがない。
最初のコメントを投稿しよう!