2・どっちが本物?

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 うちの学校では、職員室前の廊下に机が並べてあり、そこに先生を呼び出して質問できるようになっていた。  タイムリミットは職員会議がはじまるまでの小一時間。  人気の先生の場合は争奪戦になるけれど、津村先生はやっぱり人気ないらしくて、すぐ来てくれた。 「よし。で、質問は?」 「先生のこと、知りたい。あれから気になって眠れない」 「それで授業中、白河夜船(しらかわよふね)か」 「しらかわ?」  顔にも〝はてなマーク〟が浮かんでいたんだろう。  先生はあきれたようにふーっと息をつくと 「自分で辞書引いて調べて」と冷たい。  そんな小ばかにした顔しなくても。  わたしがちょっとふくれっ面になっててもお構いなし。  もお、意地悪なんだから。 「それにしても、ここじゃ、ゆっくり話せないな」 「じゃあ、連絡先教えてください」    先生は横目でちらっとわたしを見て、ささっとメルアドを書いた。  ちなみに以上の会話は全部筆談。  生徒や先生が行き来する廊下で、こんな会話交わせるわけがない。  
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