プロローグ

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 わたしの名は梅谷小春。今、27歳。  2年前、父が創業した高級食器輸入販売会社を受け継ぎ、2代目社長として、現在、毎日奮闘しているところ。  融と結婚したのは大学を出た年だから23歳のとき。  まだ子供はいない。   「酒はこのぐらいにして、こっちを頂こうかな」  融はわたしを抱き寄せ、唇を合わせてきた。  ついばむような軽い口づけのあと、頬に唇をすべらせ、耳元で囁く。 「店にいるときから早く二人きりになりたくて、うずうずしてたよ」  その言葉と耳元にかかる吐息に、ぞくりとして身を縮める。  夫の融は今、37歳。  でも、どう見ても30代前半。  わたしたち二人が並んでいても、違和感はないと思う。
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