3・デート、ではない?

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「何、金魚みたいに口をぱくぱくしてるんだ?」  信号待ちのとき、無言で葛藤しているわたしに、先生は不思議そうに声をかけた。  で、結局、わたしの不安は単なる妄想に終わった。  車はラブホの前をあっさり素通りして市街地に入り、線路沿いの道を進んでいった。  駅を超えたあたりに駐車場があり、車はそこで停車した。  降りると、なにやら、甲高い鳥の鳴き声や動物の叫ぶ声がする。 「今日の目的地、動物園ってことですか?」 「そう。ここ、来たことない? ライオンバスでけっこう有名なんだけど」  動物園……か。  拍子抜けして腰がくだけそう。  まあ、変態の巣に連れていかれるより、数百倍マシだけど  先生は27歳だから、わたしとちょうど10歳差。  彼にしたら、17歳のわたしなんて、小学生と大差ないってことなのかな。 「あれ、動物は嫌いだった?」 「そんなことないですけど」 「とにかく入ろう、な」  と、先生はチケットを渡してくれた。
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