プロローグ

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 爽やかな黒髪のショートヘア。  店に出ているときは、前髪を上げているけれど、今は下ろしている。  もう彼とはずいぶん長く共に過ごしているというのに、無造作に額にかかる前髪をかきあげる仕草に、いまだにドキッとする。  顔立ちはとても端正。  くっきりした二重、通った鼻筋、形の良い唇の持ち主。  でも、眼差しがとても優しく、美形特有の冷たい印象は皆無。  その優しさは見せかけだけじゃなく、結婚3年目の今も新婚当初と変わらず、わたしを存分に可愛がってくれる。    出会ったのは、およそ10年前。  今でこそレストランのオーナーをしているけれど、当時、彼は高校で国語を教えていた。  そう、その頃のわたしたちは教師と教え子だった。  付き合いはじめたのは、わたしが高校を卒業した後だったけれど。 「小春……」  融の手がわたしの頭の後ろに回り、口づけが深くなる。  そのまま、彼は手をわたしのルームウェアの下に滑り込ませてくる。  
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