5・会いたくて

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「与謝野晶子って聞いたことある。たしか中学でも出てきた……」 「ああ、近代女性歌人のトップランナーだ。『みだれ髪』は初の歌集で、のちに夫になる与謝野鉄幹とのスキャンダラスな恋を詠んだものなんだ」 「へえ、恋の歌ばかりなんですか」 「うん、でも官能を描いた大胆な作品も多いから、梅谷にはまだ理解するのは難しいかもな」  また、そうやって子ども扱いする。  こういうときの先生はちょっと憎らしい。 「わたしだって、そのくらいわかるし」  だって、今、恋してるから……  その言葉は言わずに飲み込んだけれど。  結局、竹取物語一冊だけ借りて、図書室を出た。 「じゃあな、また2学期に」 「はい」  先生はいつものような優しい眼差しを向け、それからくるっと後ろを向いて職員室に向かっていった。  わかってはいたけれど、誘ってはくれないんだ。
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