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先生が去ってゆく後ろ姿を見ていたら、切なさがこみあげてきた。
心の奥でもうひとりの自分がわめき散らしている。
もっと話したい。
もっといろんなことを教えてほしい。
ちょっと意地悪で、でも根っこのところは優しさの塊みたいな先生が大好きだから。
奥手のわたしにやっと訪れた初恋。
でも……ぜったい無理だ。
叶いっこない。
教師と生徒の禁断の関係だから……ではない。
そもそも、先生がわたしを恋愛対象にするわけがない。
なにしろ、彼にとってのわたしは完全にガキだし。
明日からしばらく顔を合わせないわけだから、この気持ちが自然に薄れてくれることを祈ろう。
あーあ、せめて千春と遊べれば、気がまぎれるんだけど。
夏休み中、彼女は単身赴任中のお父さんの住むロサンゼルスに行くので会えないし。
家に帰り、ベッドに寝そべり、借りてきた『竹取物語』をぱらぱらめくる。
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