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先生はひとりじゃなかった。
綺麗な女の人と一緒だった。
店の前に着くと、彼女はとても自然な様子で手に持っていたエコバッグを先生に手渡し、バッグから鍵を取り出して開けた。
なんていうか、長年連れ添った夫婦みたいなあうんの呼吸で。
先生も微笑みながら彼女に声をかけ、ふたりは店のなかに消えていった。
――知り合いの店でね。
知り合いって、女性だったんだ。
美しいブラウンに染めた髪をポニーテールにして、黒のノースリーブのパンツスーツを素敵に着こなしている大人の女性。
先生と同い年か、少し上かも。
その姿を見て、納得した。
そっか。
先生が子ザル同然の女子高生なんて相手にするわけない。
あんなに素敵な大人の女性がそばにいるんだから。
彼女なのかな。
それなら、そう言ってくれればよかったんだ。
そうしたら、こんなみじめな気持ちにならなくてすんだのに。
でも、すぐ気づいた。
先生がわたしに恋人がいるとかいないとか告白しないといけない義理はまったくない。
わたしはすごすごと家に引き返すしかなかった。
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