1・10年前、出会いの夜

2/9

464人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
 父は彼とわたしの結婚を望んでいるらしく、高校に上がったころから、今日のようなプライベートの食事会に田坂さんを呼ぶことが多くなった。  わたしは一人っ子で兄弟がいない。  なので、一番信頼のおける部下を婿養子にして会社を継がせようという父の魂胆は見え見えだ。  大学に入学したら、有無を言わさず婚約させられるのではないか。  最近の父の言動から考えると、その確率は非常に高い。  別に田坂さん本人が嫌いっていうわけじゃないけど。  父が認める人物なだけあって、身のこなしや会話もスマートだし。  見た目もイケメンの部類に入ると思う。  渋い男性が好みの女子高生なら、完全に許容範囲だろう。  でも、どうもいけすかない。  彼にとって、わたしとの結婚はステップアップの手段でしかないのは明らかだし。  つまり、彼はわたしではなく会社と結婚するようなもの。  だから、いつもとっても優しいけれど、そこにはちらちらと計算高さが見え隠れする。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

464人が本棚に入れています
本棚に追加