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と、せっかくの誕生日なのに、そんなことばっかり考えてしまって、ぜんぜん楽しめない。
でも、わたしがこんなに仏頂面でアピールしてるというのに、大人たちはまったく気に留めない。
ああ、前途多難。
で、父と田坂さんがビジネスの話で熱く盛り上がっているのをぼんやり見つめていたら、何を思ったか、父がわたしに言った。
「なんだ、おまえも飲んでみたいのか」
わたしが物欲しげにワイングラスを眺めているように見えたらしい。
すると田坂さんは、父の言葉が終わるか終わらないかのうちにウエイターを呼びつけ、「ワイングラス持ってきて」と、尊大な口調で命じた。
ところが、である。
そのウエイターは頭を下げて、毅然とした口調で言った。
「申し訳ございません。当店では未成年の方に酒類を提供することはできませんので」
ん?
なんでこの人、一瞬でわたしを未成年だと見破ったんだろう?
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