第29話 最終戦降臨する 魔王

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ショローン達はヘイビィの前に立ち、問いかける。 「マスター。これでボク達シズムツキの舞台は幕引き?」 「こんなスッキリしない終わり方、らしくないよー?」 「・・・団長、これで良いのか?」 ヘイビィは三人が思いもよらぬ事を言ってきたので、困惑していた。 「な、なんだ?あなた達・・・何が言いたい!?」 「マスター・・・これで終わりは、なんかダサい」 「主演は決まってるんでしょー?あいつらがイーサ倒したら、月音達は脇役じゃないのー?」 「魔王の骸も、手に入らない」 ヘイビィは、レナの言葉を聞き思い出したように大声をあげた。 「そうだった!魔王の骸を横取りするのが、真の狙いだったのを忘れていた!そうだ、そうだ・・・ショウコ達はバカだから、イーサのサークレットを破壊したら終わりだとばかり思ってるだろうが、そうはならん!こうしてはおれん、行ってくる!あなた達は、ここで待機していろ!」 ヘイビィは魔法で空間に穴を開け、飛び込んだ。 穴が閉じた後、残った三人は顔を見合わせる。 「マスター、絶対にオリジナル達と行きたかったやつだ」 「そうだねー!て言うか、さっきレナを人質にされた時に・・・仲間を奪われるのって辛いんだなーって、ちょっと思っちゃったんだよねー!」 月音の発言に、ショローンはハッ!と何かに気づいたような表情を見せる。 「まさか、オリジナルがレナを人質にとったのは・・・ボク達に感情移入させる為の巧妙な罠だったのか!?」 「・・・そういう事か。流石はショローンの元になっただけはある。してやられたな」 レナもショローンの言葉に頷いているのを見て、チッサは心の中で「絶対に違う」と勘違い三人組を生暖かい目で見守っていた。 「流石、姉御・・・敵の心理すら操作しているとは!このフロスティ、感服の極み!」 うわっ、何かフロスティさんまで勘違いしてる!? チッサは助けを求めるように長野ナーガの方を見ると・・・ぬいぐるみ姿になったパイロヒュドラを抱っこして、お茶を飲んでいた。 「チッサさん・・・もう、これで良いんじゃないですか?ショウコは、何でもありなんですから」 何かを諦めたかのようにも、悟りを開いたかのようにも見える菩薩のような笑みを浮かべ、長野ナーガはチッサに言った。 「長野ナーガ・・・そうだね」 チッサも長野ナーガの隣に座り、四人が向かった城を眺める。 「ショウコ・・・死亡フラグなんか、へし折って必ず皆無事で帰ってきて下さいね」 その頃、城へ向かうショウコ達は・・・まだ歩いていた。 「なんか、城に近づいてなくないか?」 「うむ。私もそんな気がしていた」 「これ~ もしかしたら、無限ループのトラップに引っ掛かったかもだわ~ なんか、高ぶっちゃって勇み足みたいな~?」 「いや、こういう罠はオウルが気づかないと・・・そういうキャラだろ?」 「ちょっと、ショウコちゃん?あたしが悪いみたいに言わないでよ!」 「おいおい、私達は一蓮托生だ。喧嘩している暇があったら、罠を解除する方法を・・・」 ラカが仲裁に入ろうとした瞬間、空間に穴が開きヘイビィが姿を現した。 「あなた達、揃いも揃って何をしているのだ?」 冷ややかな目で三人を見るヘイビィに、ショウコ達は歓喜の声をあげる。 「ヘイビィ!?お前、来てくれたのか?」 「どういう風の吹きまわしか知らんが、助かった」 「あらあら~ パーティー再結成ね~」 ゆるゆるな雰囲気の三人を見て、ヘイビィは苦虫を噛み潰したような顔で舌打ちした。 「チッ!他に言うことは無いのか?敵をフルオープンで迎え入れるな!とにかく、ここから出るぞ。入れ」 ヘイビィのおかげでショウコ達は無限ループの罠から脱出することができた。 「オウル、罠を解除しておけ。帰り道でまた引っ掛かるとか最悪だからな」 「了解~」 ヘイビィに従い、オウルは無限ループの罠を魔法で解除する。 「どうせならイーサのところまで一気に移動したかったが、無理なのか?」 質問するラカをヘイビィは冷ややかな目で見て言った。 「無理に決まってるだろ・・・敵を甘く見るな。イーサの事だから、ジェノが城を出た時点で城内に亜空間移動を防止する結界は勿論、罠を大量に仕掛けているに違い無い。慎重に進むぞ」 「ところで、ヘイビィちゃんはどういう心境の変化で来てくれたの~?」 「魔王の骸だ。あれはエネルギーの塊だからな」 「相変わらず、レアアイテム好きだなぁ。また、ミミックに頭噛られるぞ?」 昔の事をショウコに掘り返され、ヘイビィは眉をしかめてそっぽを向く。 「いつの話をしている!?とにかく、魔王の骸は貰う。その為に、あなた達を利用させてもらうからな?」 三人は「はーい」と声を揃えて返事をした。 「チッ!相変わらず緊張感の無い連中だ。話しておきたい事がある・・・カラスを飛ばして罠を探りながら進むぞ」 ヘイビィは使い魔のカラスを出現させて城の中へと飛ばし、罠が仕掛けてられていないか確認する。 「懐かしいなぁ、ダンジョン探索の時はいつもカラスで確認してたよな」 「・・・扉に罠は無い。オウル、解錠魔法」 「了解~」 扉を開き、四人は城内へと入る。 「てか、ヘイビィ魔力は大丈夫なのか?」 「アイテムで多少は回復させてきた」 「多少かぁ。なら、これ飲みな」 ショウコはリョウコから貰ったアルテポーションをヘイビィに手渡す。 「光輝くポーション・・・まさか、ショウコが作った訳ではあるまいな?」 「母ちゃんが作ったスゲェポーションだ」 「なら、ひとまず安心だな」 嫌みを言いながら、ポーションを口にするとヘイビィの体力と魔力が完全に回復した。 「何だ、このポーションは!?」 「スゲェだろ?これで思う存分、戦えるな!」 「フン、貴重なアイテムだろうに・・・今まで敵だった相手に使うとは、どこまでも甘いな」 憎まれ口を叩くヘイビィにショウコは笑顔で答える。 「今は、頼れる仲間だから問題ないだろ」 「・・・さっき、話したいと言った内容を伝える。良く聞け。お前らはイーサのサークレットを破壊すれば、融合が解除され仲間を救いだして終わりだと思っているだろうが・・・イーサは確実に魔王の骸を使って『魔王化』する。つまり、第2ラウンドがある」 「魔王化・・・そんな事が可能なの~?」 「十中八九、それが可能な状態にしているハズだ。それを踏まえて戦う」 ヘイビィの言葉を三人は疑う事無く頷いた。 「戦うからには、勝つ。これが正真正銘、最後の・・・パーティーバトルだ」 ヘイビィはショウコ達に背を向けながら、愛用している先端に緑色の石がついたロッドを向ける。 オウルは年季の入った黒い木の杖を、ショウコとラカは剣をヘイビィのロッドに重ねた。 「久しぶりだな、これ」 「正念場の戦の前は、必ずやっていたな」 「これが最後って思うと、ちょっぴり寂しいけど~ じゃあ、せーの!」 四人は重ねていた武器を高く掲げ、勇ましく鬨の声をあげた。
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