第3話 面倒見が良い系 商人

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「子が親を選べないように、親が子を選べないように、商人もまた・・・客を選べない運命なのだろうか?私は、そんな運命は認めない!必ず、乗り越えてみせる!」 ちょっと思い当たる節がある言葉から始まったから一応、最後まで聞いたけど・・・単に自分を正当化したいだけらしい。 「あのねぇ、ショウコ・・・態度が悪いお客様の接客なんて避けて通れないもんなのよ?気持ちは分からなくも無いけど、堪えなきゃ!短気は損気って言うでしょ?」 「単騎にして一騎当千!次の選挙当選!目指すは楽園、そこに向かう為に渡船!イェー!」 ダメだ・・・現実逃避ラップ始まった。 ここでツッコんだらショウコの思う壺だし、スルーして気になっていた事を聞いてみよう。 「前から疑問だったんだけど・・・そんなに強いのに、なんで戦士やめてまで商人になったの?このままじゃ、絶対に商人なんて続かないよ?」 私の言葉を聞き、ショウコはラップを止めて現実に帰還した。 「それは・・・長い話になるが、良いか?」 「うん、いいよ。聞かせて」 遠い目をして、ショウコは語り出す。 「話は、五年くらい前に遡る・・・私は、仲間と共にスゲェ強い奴と戦った。で、回復魔法使える仲間が倒れてスゲェピンチに陥った。私は、このままじゃやられる!とスゲェ思い、今まで使う必要が無かったポーションを初めてスゲェ飲んだ。で、スゲェ回復してスゲェ強い奴に勝った。その時、ふとポーションの空き瓶を見たら・・・製造場所が、スゲェ良く知る人物が働いてる場所だったんだ。で、ポーションってスゲェな、アイテム作ったり販売してる商人って実はスゲェなって感心した。私は、これまで前線で戦ってる自分たちが一番スゲェなって思ってて・・・正直、そうじゃない奴らをスゲェ見下してた。でも、戦う奴らを支えるのってスゲェなって・・・戦いが終わったら、私もそうなりたいなってスゲェ感じて、今に至る」 スゲェがスゲェ多いのが気になったけど、大体はわかった。 「そっか・・・それがきっかけで商人になろうって決めたんだね」 「あぁ、でもまだ16時間しかノルマ達成して無いからな。話をしたら、あの時の気持ちを思い出せたよ。ありがとうな、エマ」 そう言って笑顔を見せるショウコに、私も微笑む。 「じゃ、まだまだ頑張らなきゃね!」 「とりあえず、町外れに寂れたスーパーがあるから明日はそこに行ってみるよ。短期でも雇って貰えないか交渉してくるわ」 「うんうん!私も応援するよ、ショウコが立派な商人になれるように!」 ショウコが言っていた町外れにある寂れたスーパーで、彼女は働いていた。 「おい、チビ。魚、さばいといけよ」 「は、はい!この仕事終わったら、すぐに!」 スーパーの水産スタッフに「さっさとしろよ、チビ」と罵られながら彼女は農産スタッフに指示された果物を店頭に並べる。 「頑張らなきゃ、頑張らなきゃ・・・」 繰り返し、そう呟く彼女は、このスーパーのサービスカウンターとレジチェッカーを担当しているホビット族の『チッサ・イーナ』 ホビット族は大人でも人間族の子供と身長や体重が同じくらいの小柄な種族である。 チッサの身長はホビットにしては大きいほうで、120cmあり、人間でいうところの6~7才くらいの子供と同じくらいある。 ほわほわした柔らかい髪は薄いピンク色のセミロングで左側にまとめている。 耳は少し尖っていて、目は可愛らしいどんぐり眼。 可愛らしい見た目とは裏腹に、制服の白ワイシャツと紺のスラックスは薄汚れて、くたびれている。 上からかけた赤いエプロンも同様に薄汚れており、茶色く見えるくらいだった。 チッサは、ここに勤めて1年と3ヶ月・・・毎日のように朝から晩まで働き詰めである為、制服もエプロンもすぐになってしまう。 本来、スーパーは食料関係の畜産、農産、水産、菓子や飲料を扱うグロッサリー、それ以外の日持ちしにくい卵や牛乳を扱う日配部門がある。 この世界では、更に武器や防具、魔法のアイテム等もあるので私達の世界のスーパーマーケットより、沢山の商品を扱っている。 チッサの他にも社員、バイト、パートはいるが入れ替りが激しく、気がついた時には皆がチッサに仕事を押しつけるようになっていた。 それでも、チッサは優しく真面目な性格をしているので「私がやらなきゃ!」と、明らかなオーバーワークでも仕事をこなす。 体調が悪くても、身体が痛くても、彼女は仕事を休まない。 そんな彼女に、リーゼントヘアの小太り店長が声をかける。 「おい、チッサ!もう休憩か?辛いことから逃げてばかりじゃ、一人前の商人になんかいつまで経ってもなれはしないぞ!」 「はい、店長!私、逃げたりなんかしません!すぐ、続きをやります!」 そんなチッサを見ながら、店長はほくそ笑む。 糞真面目は扱いが楽で良いな。さて、事務所で一服するか。 そう思いながら、胸ポケットからタバコを取り出して火をつけてバックルームを悠々と歩き事務所へと姿を消した。
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