第29話 最終戦降臨する 魔王

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城内に入った四人は、ヘイビィのカラスが発見した罠をオウルに解除してもらいながら先へと進む。 「・・・妙だな。人造邪神の一体や二体は潜んでいると思っていたが」 「ジャジーンか?それなら、私とラカで全部やっつけたっぽいぞ」 「フン、だと良いがな」 そして、とうとう四人はイーサが居るであろう王座の間にたどり着いた。 「扉に罠は無いな・・・好きに開けろ」 ヘイビィの言葉と共にショウコが扉を蹴り破る! 蹴り飛ばされた扉が赤い絨毯がひかれた床に倒れ、王座に座るイーサが四人を前に立ち上がった。 「ここまで来れたのは、ショウコさん、ラカさん、ヘイビィ、そしてオウル様ぁんだけみたいですね」 イーサの気の抜けるオウルに対しての猫なで声に一同、凍りつく。 「・・・なんで、オウルに対してはそんな気持ち悪い猫撫で声なんだ?」 あからさまに嫌悪感を露に問いかけるヘイビィにイーサは冷たい視線を送る。 「気安く話しかけるな、愚か者。オウル様ぁんは、私があのクソみたいな世界で唯一、尊敬できる存在だったのよ」 「クソみたいな世界か・・・確かに、ノーム王国の女王になった時に各国が抱える闇を知った身としては同意だな。それでは尊敬するオウルに免じて、その似合わないサークレットを破棄して魔王の骸を大人しく渡して貰おうか?」 「気安く話しかけるなと何度も言わせるな、愚か者!オウル様ぁんは、私が自ら愛を持って葬ります。貴様らの相手は、人造邪神最高傑作・・・スーパージャジーンだ!!」 赤い縦断に魔方陣が浮かびあがり、身長2メートルはあろう大型ジャジーンが姿を現した。 黒光りする筋骨隆々の肉体!通常のジャジーンより長く逞しい二本の角、背中には大きなコウモリの翼を生やしている! まさに、スーパーと言う名が相応しいジャジーンの最終進化形態!! 「スーパージャジーン・・・ネーミングセンスはヘイビィと同レベルで、クソダセェな。まぁ、ゲームみたいにラスボスが勇者パーティーと一人で戦う訳はねぇか」 「おい、ショウコ?今、ディスる必要あったか?」 「悪いが、オウルと一騎打ちなんぞさせるつもりは毛頭無い!」 先手必勝と言わんばかりに、ショウコとラカが同時にスーパージャジーンに斬りかかる! しかし、スーパージャジーンは二人の斬撃をいとも容易く弾き返す! 二人は空中で身体を回転させ、壁に両足をつけて衝突を回避して着地した。 「バカ硬ぇ!?」 「傷跡すら残らない・・・そして、凄まじいパワーだ」 ヘイビィが眉をしかめてスーパージャジーンを見据える中、オウルは杖をイーサに向けて振りかざし、加圧放水魔法を一気に三発同時に放つ! イーサは魔法を受けようと、渦巻く炎の盾を展開した。 オウルの放った加圧放水魔法は炎に遮られる直前で軌道が変化し、天井を撃ち抜く! 天井が崩れて瓦礫が降り注ぎ、それを風の魔法で操る! 加速した瓦礫が四方八方からイーサに襲いかかった! イーサは瞬時に渦巻く炎をドーム状に変化させ、全方位を守る炎のバリアーで攻撃を防ぐ。 「エマみたいに、途中で自在に変化させる事はオウル様ぁんでも無理みたいですね。それでも、私の動きを予測して変化するよう仕込まれた放水魔法、お見事です。更にそれを囮に暴風魔法で流れるような連続攻撃!流石、オウル様ぁん」 にこやかな笑顔で拍手を送るイーサを見て、普段は飄々としているオウルも顔をひきつらせる。 放った魔法の形状を変化させた・・・エマちゃんから聞いていた、リリィちゃんのディフォーメーションの応用ってとこかしら。 恐らく、融合した二人の魔法特性を使用できる。 「オウル様ぁん、黙りは余裕が無いからですかぁ?今度は私から撃たせて貰いますが、終わってしまわないか心配ですぅ」 イーサは重ねた両腕を勢い良く広げ、五発同時に臨界圧力超高熱放水魔法を放つ! 嫌みな娘ねぇ~ これ見よがしにワンランク上の魔法で数も上回ってみせるなんて、性格悪いわぁ~ 天井に開けた穴からオウルは飛び出し、縦横無尽に追いかけてくるイーサの魔法を空中で躱し続ける。 粘着質ねぇ~ 回避しても軌道を変化させて延々と追尾してくる・・・魔法力も三人分あるから、持続力が桁違いだわ~ 撃ち落とさないとダメみたい~ オウルは追尾してくる臨界圧力超高熱放水×5を引き付けて、爆発魔法で一気に消し飛ばした。 このペースだと、あたしの魔力が底を尽きるわね~ 皆の援護が無いとキツイわ~ そう思いながら降下し、再び城内に戻ったオウルはショウコ達を一瞥する。 ショウコとラカは間髪いれずに斬撃を浴びせ続けているが、スーパージャジーンはびくともしない。 「援護は望めそうに無いわね~」 「オウル様ぁん、余所見は嫌ですぅ」 「・・・あなた、何でそんなにあたしを気に入ってるの~?」 「深い理由はありません。ただ、純粋に強い者に憧れていただけです。そして、ずっと思ってました。をモノにすれば、オウル様ぁんさえも越えられるだろうって・・・思った通りでしたわ」 エマちゃんの事をわざわざ部品呼ばわりしているのは、あたしを激昂させて冷静さを失わせる為ね~ その手には乗らないわよ~ そう思いながら、オウルは切り返す。 「ん~?まだ、始まったばっかりじゃな~い?粋がりたいなら、あたしに傷一つでもつけてからにしてね~」 「かかってこいよ」と言うように、黒木の杖をクイクイ動かしオウルはイーサを挑発する。 「挑発的なオウル様ぁんも、素敵ですぅ」 イーサが嬉々として魔法を放ち続ける中、ヘイビィは盾の魔法をラグビーボールのような楕円形状に変形させてスーパージャジーンに撃ち放つ! スーパージャジーンはそれを回避し、豪腕振るわせヘイビィに殴りかかる。 ヘイビィは涼しい顔をして盾の魔法で攻撃を受け止めた。 ショウコとラカを二人まとめて弾き飛ばす程のパワーを持つスーパージャジーン・・・それが、どういう訳か盾の魔法を破壊する事が出来ず後退する。 「フン、どうやら物理攻撃が効かない代わりに魔法攻撃には弱いらしい・・・ネタバレだ。終わらせるぞ、ショウコ、ラカ」 「相変わらず、頼りになる奴だなぁ」 「息は合わせる、指示は任せた」 ショウコとラカは剣を構え、ヘイビィはオウルに向かって大声で呼び掛ける。 「オウル、テレパシー魔法!!」 「了解~」 皆に指示を出すヘイビィをチラっと見てイーサはほくそ笑む。 単に物理に強く魔法に弱いだけなら、最高傑作なんて言わないわ。 所詮、貴様も商人共と同じく私に使われる為だけに存在しているという事を・・・思い知るが良い。 オウルに攻撃を続けながら、イーサは勝利を確信していた。 何故なら、スーパージャジーンには罠が仕掛けられていたからである。
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