20人が本棚に入れています
本棚に追加
虹色のサークレットから解放され、意識を失っているエマとリリィをヘイビィはすぐさま亜空間魔法で城の外で待機している仲間達の元へ飛ばす。
額から血を流しながら、元の姿に戻ったイーサは突風魔法で間合いを取る。
額を押さえながら、イーサは歯軋りしながらヘイビィを睨む。
「貴様、何故スーパージャジーンのマジックリフレクションモードに勘づいた!?」
悔しげな表情のイーサを見て、ヘイビィは満面の笑みを浮かべて高笑いした。
「アッハハハハ!あなたのような自分を過大評価している者の手口なんぞ、お見通しなんだよ。これ見よがしに物理に強く魔法に弱いのをアピールしていれば、怪しむのは当然。オウルにフェイクを指示し、炙り出した所で標的を変更。不意を突いたと思ったが、ガードしたのは上出来だったぞ。誉めて使わそう、魔・王・様 アッハハハハ!」
スゲェ煽るなぁ・・・と、ちょっとヘイビィに引きながらショウコは不死鳥でダメージを受けたラカに声をかける。
「大丈夫か、ラカ?マジで助かった。ポーション飲め」
「流石、神霊魔法・・・神竜の防具越しでも大ダメージだった。だが、ハイポーションで十分だ」
オウルは黒木の杖を拾い、イーサを見据える。
「あたし達は目的達成したから、もう帰りたいのよね~ 出来れば、もう片方の爪を剥がないで済ませたいし~」
イーサは額の傷を回復魔法で治し、再びヘイビィに尋ねた。
「最後に、どうしてフェジカルリフレクションモードのスーパージャジーンが斬られた?」
「闇の魔法をショウコの剣に添付しただけさ。そうすれば、大地魔法や武具魔法が使えなくとも魔力を帯びた、どちらにもダメージを与えられる攻撃が可能だろう?最高傑作が聞いて呆れる。アッハハハハ!」
ヘイビィの話を聞き、ラカは自分の奥義神竜強撃をショローンに受け止められた事を思い出す。
「リパルションフォースとか言ったか?」
「バカラカの癖に良く覚えているな。あれは相殺専用の防御用だが、それを攻撃に転用したのさ」
「珍しく、褒められたな」
「いや、ラカ・・・ご満悦の所、水を差すようで悪いが初っぱなで貶されてたと思うぞ?」
そんな緩いやり取りを興味なさそうに見つめながら、イーサは自身の足元に魔方陣を浮かび上がらせた。
「エマもリリィも、私も一つになる為に生まれてきたのです。そして、汚れきった世界から脱却し真のユートピアを創る事こそが使命。ヘイビィだけじゃなく、ラカさん、オウル様ぁんも各国の在り方に疑問を抱いているでしょう?例えば、奴隷商人・・・何故、国のトップ達が商人の神にタブー化を願い出ないか。ショウコさん、貴方は商人なのに疑問に思わないですか?どの国も、薄汚い者達と裏で繋がっているんです。現にラカさんは私とヘイビィの企てとは言え、国の上層部にいる下賎の輩に陥れられた。あの王国が、いまだに三大貴族から嫁を娶るのにも理由があるんですよ?世界を手中に収める為に、優れた統率者を生み出したいんですって・・・つまり、全ては戦争の準備。邪神崇拝者達は、それをさせない為に活動していたとも噂されてます。まぁ、元勇者様方が知る由も無い話なんでしょうが」
ショウコはイーサの話を聞いた上で、切り返す。
「お前がどんだけ講釈垂れようが、私の気持ちは変わらない。私は・・・勇者と持て囃され、自分は何でも出来るんだって思ってた。だから、母ちゃんみたいな商人にだってすぐになれると思ってた。でも、商人学校に入ったら絵に描いたような落ちこぼれっぷりでゴブ代とボル子がいなかったら卒業だって危うかった。卒業後、4,320時間の実務経験を積む為にスーパーで働いてもすぐにクビになって、自分に自信が持てなくなりかけてた。それでも、虚勢張ってどうにか前に進もうとしている時に・・・エマと出会えた」
ヘイビィ、ラカ、オウルはエマと出会った後のショウコと再会している。
だから、ショウコが商人として全く上手くいっていなかった事を知り驚いていた。
「エマと出会えて、友達になって・・・辛かった日々が一変した。それから、チッサにも出会えて雇って貰って4,320時間の実務経験も気がついたらクリアしてた。それから、再会や出会いが沢山あって・・・全部、全部、エマとの出会いから始まったんだ。イーサ、お前がエマを必要とするのとは違ってエマを大切に思う私達にエマやリリィが必要なんだ。だから、どんな大義名分を掲げようとも絶対に譲れない。それに・・・」
ショウコは大剣を構え、イーサを睨む。
「商人として、ケジメをつけなきゃならねぇんだわ。私にとっての商魂ってのは、商人が魂を込めて正々堂々と世のため人のために稼ぐ様を言うんだ。私がお前にアイテムを売ったせいで仲間達に辛い思いをさせた。悲しい思いをさせた。だから、二度とそんな思いはさせねぇ!」
「たかが少数の為に、この浮遊魔大陸に住む沢山の人々と弱き邪神達の幸せな世界が犠牲になっても良いと?」
イーサの言葉を聞いたヘイビィが鼻で笑う。
「フン、魔王の骸があれば浮遊魔大陸を維持するエネルギーは申し分あるまい。しかも、今頃はアビ・キョウカにボコられているだろうが大邪神もいるではないか。あなたは、単に二人を自分の物にしたいだけのエゴイストにすぎん。ぶちのめされたくなければ、潔く手を引け」
「ヘイビィの言う通りならば、無益な争いこそ民達の為にも避けるべきだ。君が本物の君主ならば分かるだろう?」
ラカも諭すようにイーサに語りかける。
「あたしも、ショウコちゃんと少し似てる感じだけど~ エマちゃんと出会えて研究だけが生き甲斐の日々が変わったわ~ 弟子としてだけじゃなく、本当の娘みたいに大事に思ってるの~ だから、もう終わりにしましょ~?」
「・・・私は、オウル様ぁんがエマと屋敷に来た時に嫉妬心を露にしましたが、内心、嬉しかったんですよ。オウル様ぁんの師事で、少しでもエマが強くなったら嬉しいと思ってました」
「そうなの~?あなたも、エマちゃんの成長を望んで・・・」
「出来損ないの欠陥パーツが、少しでもまともになるってね!フハハハハハハハ!!来い、魔王の骸!!」
イーサの足元に広がる魔方陣から邪悪なオーラに包まれた竜骨の鎧が現れ、イーサはそれを装着した。
竜の頭蓋骨の兜、骨の鎧、骨の翼、骨の尻尾、更に鋭い鉤爪を持つ竜骨の腕が二本、空中に浮いている。
魔王化したイーサを前にショウコ達は身構える。
「やっぱ、第2ROUNDに突入するんだな」
「だから言っただろ、あると」
「魔王の骸を破壊したら、浮遊魔大陸は落ちるのか?」
「そうならない為にも、本体であるイーサを死なない程度にブッ飛ばさなきゃって感じかしらね~」
やっとの思いでエマとリリィを救出したショウコ達だったが、常軌を逸したイーサの二人に対する執着心により最後の戦いが幕を開けた。
最初のコメントを投稿しよう!