第30話 伝えたい思いを 君に

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第30話 伝えたい思いを 君に

「ん・・・」 「エマさん、気がつきましたか!?」 凄く懐かしい声が聞こえる・・・この声は、社長? 目を開けると、涙を溢れさせている社長と長野ナーガ、何故か身体が赤くなってる、ぬいぐるみに化けてるヒュドラの姿があった。 ゆっくりと身体を起こし、辺りを見渡すと・・・そこにいる面々に度肝を抜かれた。 「えぇ!?フロスティは分かるとして、何で死んだハズのヘイビィ一味が!?これって」 「緊急事態だな、エマ・ジェンシー」 また、私の台詞を横取りしたフロスティを睨むとまだ意識を失っているリリィに膝枕をして涙を浮かべていた。 「・・・記憶があやふやなんだけど、誰か説明してくれる?」 私の問いかけに、社長がすぐに答えてくれた。 「エマさんとリリィさんは、約三ヶ月前にイーサによって拉致され融合していたんです。それを私達が助けに来ました」 記憶が蘇ると同時にイーサの中でショウコ、ラカ様、師匠、そして何故かヘイビィが共闘している光景が浮かび上がる。 「大体、思い出した・・・皆、本当にありがとう!でも、百歩譲って生きていたのは理解できても何でヘイビィ達が協力して・・・って、ぬぁにあんた達まで泣いてるの!?」 「だってー!皆、泣いてるからー!もらい泣きしちゃってー!ねぇ、レナ?」 「・・・良かったな、戻ってこれて」 「ボクは涙を流せない、けどマスターが頑張った甲斐があった事を嬉しく思う」 何か、キャラ変わりすぎじゃない? あの妖狐なんか、多重人格で長野ナーガを目の敵にしてなかったっけ・・・待てよ、さっきレナって言ってたなかった? 良く聞くと声も似てる気がする。 「まさかとは思うけど、あんた月音?ホテル ホンスーで蜘蛛猫と一緒にいた」 私がそう言うと、妖狐はホンスーで会った月音の姿に変化した。 「鋭いッスねー!あっしらの正体に瞬く間に気づくなんて、探偵にでもなったら良いんじゃないッスか?」 「・・・良く言われる。それより、ショウコ達は?」 「恐らく、まだイーサと戦ってる」 ショウコのクローン・・・確か、ローション?いや、違う。 ショローンだ。 ショローンはそう言いながら、城の方を見た。 「まだ戦ってる・・・なら私、行かなくちゃ!」 「ま、待て、エマ・ジェンシー!私達が行っても足手まといだ」 「フロスティは、リリィの側に居てあげて」 「おい、話を聞け!」 「ショウコの援護(フォロー)は私の役目なの!それだけは、絶対に誰にも譲らないんだから!」 魔法で飛び立とうとすると、ショローンに腕を掴まれた。 「見た目と違って、じゃじゃ馬だな。なら、ボクも一緒に行こう」 「ショローン!?だって、もう電鉱石のストック無いんでしょー?」 ショローンはポーチから取り出した黄色石を月音に見せて、微笑んだ。 「嘘も方便。ボクが居ると、マスターがやりづらいかと思って」 「・・・でも、ショローンはリザレクション効かない」 「大丈夫、レナ。ボク、引き際はわきまえてる」 社長と長野ナーガ、ヒュドラも心配そうな顔をしている。 「エマさん、どうしても行くんですか?」 「なら、私とダーリンもだいぶ回復しましたからお供します」 「長野ナーガ、ヒュドラ・・・気持ちは嬉しいけど私じゃ、一人抱えて飛ぶのがやっとだから」 そんな話をしている最中、突如として何者かが飛来し、何かを地面に放り投げた。 恐る恐る見ると、それは・・・ズタズタにされ気を失っている男性だった。 「ぬぁに事ぉ!?だ、大丈夫ですか!?」 「そやつは敵じゃ、放っておけ」 そう言いながら、飛来した子供の着物を無理矢理着たような女が着地する。 この人もボロボロだけど・・・誰? 「キョウカさん、勝ったんですね!」 社長の言葉を聞き、私はようやくこの妖艶なお姉さんがラカ様と暮らしているキョウカちゃんだと気づいた。 「き、キョウカちゃん!?元の姿に戻れたって事?」 「うむ。エマじゃったかのう?お主が居るということは・・・ラカ達はイーサに勝ったようじゃのう」 そう言って、キョウカちゃんはぺたんと地面に腰をおろす。 どうやら、立っているのもしんどかったようだ。 「・・・だが、まだ戻って来ていないという事はイーサ様は魔王の骸を使っているという事・・・行かなければ・・・あれは、まだ未知の部分が多すぎる」 キョウカちゃんにボコられた人が立ち上がり、足を引きずりながら城へと歩き出す。 「まだ、そんな元気があるとはのう。やはり、トドメを刺して邪神界に強制送還せねばならんか」 「やめろ、アビ・キョウカ・・・これはお互いの為だ。魔王の骸があれば最悪、浮遊魔大陸は機能する。スーパージャジーンがいれば、ショウコ様、ラカ様、オウル様には勝てると見込んでいたが・・・ヘイビィが居ない所を見ると、どういう訳か力を貸したらしい。想定外の事態、私がイーサ様をお助けせねば」 この人は、邪神なのだろうが・・・イーサの事を本気で心配しているようだ。 「まぁ、どちらにせよそのダメージじゃ城まで辿り着く頃には決着はついとるじゃろう」 そう言って、キョウカちゃんは大の字になって倒れてしまった。 「良く分からないけど、今行くからね・・・ショウコ!」 私はショローンを抱きかかえ、勢い良く飛び立った。
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