第30話 伝えたい思いを 君に

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一方、その頃・・・魔王となったイーサの前にショウコ達は苦戦を強いられていた。 「クッソ!あの、フワフワしてる腕がうぜぇ!斬っても砕いても、すぐに元に戻りやがる!」 「一見、アンデッドかと思ったが神聖魔法の類いは効果が無い」 「爪を剥いで魔力は回復させたけど、闇属性の中級魔法を延々と連発してくるわ~ 相殺してたらすぐに魔力切れちゃう!」 「まるでシューティングゲームのような弾幕だな。だが、これなら私がどうにかできる!」 黒く燃える炎の弾をラカは盾で弾き、剣で斬り裂く。 魔法に対応するラカを浮遊する二本腕と、先端が槍のように鋭く尖った尻尾が襲う! 「させる訳、ねぇだろ!」 それをショウコが大剣でなぎ払った。 何とか凌いでいるが、ショウコ達は防戦一方。 「フハハハハハハハ!どうしたぁ?魔王の骸からは闇の魔力が常に送り込まれ、闇魔法ならいくらでも撃てる。更に、自動で復元する腕に貴様等の剣にも負けぬ硬く強靭な尻尾!今の状態でこれなら、元の姿に戻れば無敵!魔界のみならず、貴様等の世界も邪神界も手中に収め三界の王となるのも容易いだろうなぁ!」 「おいおい、最初と言ってる内容が変わってねぇか?喋り方も何か変だし、力に呑まれて最高にハイってやつになっちまってるのか?」 「だが、言うだけの力量はありそうだな。突破口は必ず見つけてやる、今は凌げ!オウルも無駄に魔法は使わず分析に集中しろ、何か気づいたらテレパシー魔法だ!」 「了解~」 ヘイビィの言葉に勇気づけられ、前衛二人は獅子奮迅の活躍を見せる。 「貴様等、疲れを知らんのかぁ?ならば、パターンを変えてやろう。ブラックミスト!」 霧状の闇魔法が周囲を包み込み、徐々に体力を奪われる! 「風の魔法で吹き消すしか・・・」 「待て、オウル。これを使えば何とかなるかも!」 ショウコはチッサから受け取ったミストポーションを使う。 霧が晴れ、何事も無かったようにしているショウコ達を見て魔王イーサは眉をしかめる。 「バカな・・・誰もダメージを受けていないだと?」 ダメージは受けた。しかし、受けた側から広範囲に広がり一定時間持続するポーションの霧の中にいた四人は、ほぼ無傷。 「その魔法、自分も黒い霧の中は見えないから何かあったか分からないみたいだな?単刀直入に言えば、私らには効かないんだよ!」 しつこく使われたらヤバいと思いながら、ショウコはハッタリをかます。 「チッ、小賢しい」 ショウコのハッタリを鵜呑みにした魔王イーサはブラックミストを使うのを止め、延々と出し続けていた闇の炎弾を撃つのも止めて物理攻撃のみで攻めてきた。 「魔法を止めた?今のウチに、試してみるか」 ヘイビィは盾を楕円形状に変化させ、一気に三発同時に撃ち放つ。 一発は腕で弾かれ、残る二発は魔王イーサに当たる直前でバリアーが発生して防がれてしまった。 「魔力を防御に回してるのか?」 「だから、魔法撃つの止めたのか・・・どうにか近づいてブッた斬るぞ!」 ショウコとラカは息を合わせて連繋攻撃を仕掛けるが、尽く防がれる。 一方、ヘイビィとオウルは違和感を覚えていた。 歴戦の猛者である二人の連繋に、いくら実力があるとは言え魔法使いがこうも対応できるものか? ヘイビィちゃん、恐らくだけど・・・腕二本は自動で動いてるみたい~ それと、さっきの魔法攻撃を一発だけガードしたのが気になるわ~ テレパシー魔法で会話しながら、ヘイビィは思い返す。 あのまま、ガードされていなければ・・・頭部に当たっていた。 魔王の骸が頭部からの指令で自動運用されているなら・・・狙うべきは、頭部ね~ 前衛二人にもそれを伝え、反撃を開始! 「風の神霊よ、力を貸したまえ・・・風雷獄!」 暴風域の結界に閉じ込めようとするオウルだったが、防御に転用していた魔力を一気に放出し魔王イーサは結界を破壊! しかし、それと同時に大量展開した円盤状の盾が回転しながら魔王イーサを四方八方から攻撃! 尻尾を鞭のようにしならせ、魔王イーサは一気に盾を打ち落とす! 更に、ショウコとラカが猪突猛進し斬りかかるが二本の浮遊する腕が立ちはだかる。 だが、ヘイビィはショウコとラカにはスピードをアップさせる為の反重力魔法によるバフを魔王イーサには重力によるデバフをかけた。 「腕は二本とも、引き受ける!」 「ありがとう、ラカ!脳天かち割ってやる!」 ショウコの振り下ろした大剣が、魔王イーサの竜骨の兜に亀裂を入れた! 「ぐぬぅ!?鬱陶しいぞ、痴れ者!!」 衝撃波を発生させてショウコを弾き飛ばし、追撃は許さない。 「流石に一撃って訳にはいかなかったが、手応えあったな!」 「腕の動きも心なしか遅くなった気がする。この調子でガンガン攻める!」 オウルは不発だったとは言え神霊魔法を放った為、魔力は僅かしか残っていない。 涼しい顔をしているが、ヘイビィも同じ。 隙を伺っては飲んでいた魔力回復ポーションも使いきり、次の一手を模索する。 「ごめんね~ もう、ろくな事は出来そうにないわ~」 「亜空間魔法で逃がしてやりたいが、同じく魔力は尽きかけだ。自分の身だけは、どうにか守れ」 攻撃を受けた魔王イーサは、ショウコの大剣の威力に肝を冷やしていた。 あの大剣、不味いな・・・ラカの剣は光の属性だから闇の力と反発し弾き返す事も可能だろうが、あれは別だ。 ならば、奪うまで。 魔王イーサは魔方陣を浮かび上がらせ、両手に魔力を溜めて大技を匂わせる。 「何か、ぶちかます気だぞ!?」 「問題無い。魔法なら、私が防ぐ」 自信満々のラカを見て、魔王イーサはほくそ笑む。 「なら、防ぐが良い。狙いは・・・城の外にいるお前らの仲間だ。テレパシー魔法の範囲外、警告を促す事もできまい。おっと、ス魔ホには触れるなよぉ?」 「てめぇ、どこまで性根が腐ってやがる!?」 「高出力の終焉(ディマイズ)・・・一撃で全滅とはいかないだろうが、あのホビットの商人は一溜りもあるまい」 「チッサの事か?」 「前にも言ったが、商人は使い勝手が良いなぁ」 そう言いながら、魔王イーサは城の外へ魔法を放つ! 「させるかぁ!!」 盾を構えて終焉(ディマイズ)を遮ろうとするラカだったが、それは単なる似せただけの中級闇魔法のエネルギー波で簡単に防ぐ事ができた。 「ハッタリかよ、ふざけやがっ・・・て!?」 しかし、ほぼ同時に槍のように鋭い先端を持つ尻尾が盾ごとラカを貫く! 「しまった・・・フェイントか・・・」 「ラカ!?」 膝から崩れ落ちるラカに駆け寄ろうとする三人を魔王イーサは怒鳴り付けて制止させる。 「動くんじゃなぁい!!次は本当に全力で魔法を撃つ。止めて欲しいよなぁ?」 「・・・止めてと頼めば、止めてくれんのかよ?」 「そんな訳があるか、出来損ない商人。その大剣をよこせ。そうすれば、始末するのは貴様等だけにとどめてやろう」 イーサはショウコの剣を恐れている? ヘイビィがテレパシー魔法で渡すなと、指示を出すより先にショウコは大剣を放り投げてしまった。
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