第30話 伝えたい思いを 君に

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額から一角、背中からコウモリのような翼を生やし、邪神化したラカが立ち上がる。 魔王の骸はラカから凄まじい殺気を感じ、攻撃を仕掛けた。 飛来した腕を躱し、一気に距離を詰めたラカは目を紫色に光らせ、素手で魔王の骸に殴りかかる。 ボディに拳を連打し、壁までブッ飛ばす! 魔王の骸とラカが戦っている最中、オウルが目を開ける。 「な、何が起きたの~?ショウコちゃん、大丈夫!?」 ショウコは咄嗟にオウルを庇った為、下敷になっており、その際に受けたダメージで元の姿に戻っていた。 「ってて・・・やば、気を失ってたのか?」 身を起こしたショウコの目には、邪神化したラカがイーサ抜きで動いている魔王の骸と戦っている姿が映る。 「魔王の骸が動いてやがる・・・しかも、ラカは邪神化しちまったのか!?」 加勢しようとする中、オウルが悲鳴にも似た声でショウコの名を呼ぶ。 「ショウコちゃん!!あれ・・・」 オウルが指差した先に、ヘイビィの亡骸があった。 「嘘だろ・・・」 「邪神化した理由は、これね・・・ショウコちゃん、ラカちゃんを見て」 ラカは拳から鮮血を飛び散らせ、一心不乱に殴り続けている。 「ラカのやつ、何で武器を使わないんだ?」 「十中八九、正気じゃないわね~ 邪神化して、怒りと憎しみに呑まれてるんだわ~ いくら邪神化して強くなったからと言って、あのままじゃ身体が持たないわ~ ショウコちゃん、少しだけ時間を稼いで!あたしがラカちゃんを正気に戻すわ!」 「分かった。頼む、オウル・・・」 辺りを見渡し、ショウコは落とした自分の大剣に手を伸ばす。 腕、震えてやがる・・・ヘイビィの事を思うと怒りや悲しみで感情がグチャグチャになる。 ラカもこんな気持ちか? 「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 口から涎を滴し、叫びながら魔王の骸に襲いかかるラカの右腕が鋭い爪で引き裂かれ、床に落ちる。 腕をすぐさま再生させたラカに、魔王の骸は間髪入れず口から闇の波動を放ち追撃した。 「ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ」 息を切らし、紫色に光る瞳で魔王の骸を睨み付けるラカだったが、膝をついたまま動かない。 「よう、よくもやってくれたなぁ?」 これ以上、ラカを攻撃させまいとショウコは魔王の骸の注意を引く為に敢えて声を出した。 ラカよりショウコの方が危険と判断した魔王の骸は標的を速やかに変更し、尻尾をしならせ攻撃を開始。 その隙にオウルがラカを背後から抱き締める。 「ラカちゃん、あたしの声が聞こえる?」 「うぅぅ・・・がぁぁぁ!!」 振りほどこうと暴れるラカを、オウルは離さない。 「聞いて、ラカちゃん!皆で力を合わせないと勝てないわ!あなたは強いんだから、邪神の力に呑まれたりしない!」 訴えかけるオウルの言葉は、ラカには届かず抵抗が続く。 言葉が届かない?いや、本気ならとうの昔に引き剥がされてるハズだわ。 届かない訳が無い・・・だって、あたし達は最強の勇者パーティーなんだから! これまで共に過ごした時間、培った信頼関係、友情は嘘じゃない。 そう思いながら、オウルはラカへ思いを告げる。 「恥ずかしいから、一度も口にしなかったけど!ラカちゃん、ショウコちゃんと一緒なら、きっと沢山の困っている人達を助けられる。そんな予感がするって言ってたよね?あたしは、ショウコちゃんよりもヘイビィちゃんよりもに予感を感じて声をかけたの!ラカちゃんなら、最高の勇者になれるって・・・根拠は無いけど確かに感じたの、ラカちゃんの強さを!だから、力に呑まれないで!負けないで!戻ってきて!!」 オウルの思いが通じたのか、ラカの瞳から紫色の光が消えて落ち着きを取り戻す。 「オウル・・・私は・・・」 「お帰りなさい、ラカちゃん。話は後、武器を拾ってショウコを助太刀して!」 「分かった。その前に・・・受け取ってくれ」 ラカはオウルの手を握り、邪神の力を魔力に変換して注いだ。 「神霊魔法で失った魔力が、少しだけど回復した?」 「ヘイビィが封印石からキョウカの力を奪って魔力に変換していたから、出来るかと思ってな。どうやら、上手くいったようだ」 ラカはそう言いながら、寂しげな笑みを浮かべる。 「じゃあ、これはラカちゃんとヘイビィちゃんのおかげって訳ね~ 神霊魔法は一発撃ったら終わりだから、精霊魔法で援護するわ~」 「うむ。頼む、オウル」 魔王の骸の猛攻を凌ぎ続けていたショウコだったが、尻尾で殴打されてブッ飛ばされた。 しかし、壁にぶつかる寸前でラカがショウコを受け止める。 「大丈夫か、ショウコ」 「ラカ、正気に戻ったみたいだな」 魔王の骸は追撃しようと、腕を飛ばしてきたがオウルの爆発魔法弾がそれを弾き返す! 「オウル!?魔法、使えるのか?」 「中級魔法なら、まだまだ撃てるわよ~」 そう言いながら、ウインクするオウルを見てショウコは親指を立てて微笑む。 そして、ヘイビィの亡骸を一瞥した後、魔王の骸を睨み付けた。 「ヘイビィの弔い合戦だ。勝つぞ」 神竜聖剣を拾い、ラカは相槌を打つ。 「うむ。決着をつけよう」 「完膚なきまでブチのめして、コイツの絶叫を鎮魂歌してあげましょう~」 三人は思いを一つにし、魔王の骸に挑む!
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